王滝川支流 白川・大秀沢(大ヒゼ沢)

2011年8月13日
王滝川支流 白川・大秀沢(大ヒゼ沢)   【小秀山】
山行・事故報告


渡辺・和田・大祐・千浩・智尋

瑞浪5:00=白川林道P7:45/8:15-上大ヒゼ橋入渓点8:30-1350m辺りの滝11:00
事故発生11:15-(大祐・智尋下山11:40-長野県警ヘリ飛来14:50-救助搬出14:55)
渡辺・千浩下山15:00-大祐・智尋と合流15:30-白川林道P16:40=王滝の湯17:40/18:15=
木曽病院19:00/19:30=木曽警察署19:40/20:10=瑞浪22:15/23:55解散

 滑落・骨折、そして長野県警ヘリに救助して頂くという事故を起こしてしまいました。
ここでは山行報告と併せて事故報告をします。

大秀1-IMG_4081

 今回の山域研究の場所は、王滝川支流・白川、大秀沢。通称大ヒゼ沢。
7月に大祐と栄治が行った小ヒゼ沢は小秀山に直接突き上げることから、小ヒゼ沢の頭、
即ち小ヒゼ山(小秀山)と称されるようになったと思われる。
今日はその小ヒゼ沢の一本下流の大秀沢。
二万五千地形図を見ると行程の大半が両岸切り立ち困難な遡行を強いられることを予想された。
これほど等高線の混んだ谷は裏木曽・阿寺山地でも随一でしょう。

大秀2-IMG_4083

 7月の沢泊の付知川西股遡行の反省から、
小人数で強行すれば一日で行って来られると思われる大秀沢を一泊二日の計画とした。
ゆっくりと遡行を楽しみ、渓で泊まり、稜線に出て小秀山のピークを踏めば達成感ある充実した山旅になるだろう。

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大秀4-IMG_4088

大秀5-IMG_4091

大ヒゼ沢1

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 上大秀沢橋から入渓した。しばらくは明るく開けた谷で2~3mほどの滝やエメラルドグリーンの淵が続く。
今日は急がない。初めから大休止だ。30分くらい休む。
ピースサインが出るほど余裕です。

大秀7-IMG_4097

大ヒゼ沢3

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 徐々に谷は狭まり8m程の大滝に出会う。ここでも大休止。
滝壺のプールで釣竿を出したり、お握りを食べたりして寛ぐ。

大ヒゼ沢5

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大秀10-IMG_4124

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 ここから滝が連続し始め、容易い所は水流に、
また脇の弱点を狙って登ります。たまにはお助けロープで助け合いながら上流へ。
まだまだ時間はたっぷり有り、楽しんで遡行を続けました。

大秀12-IMG_4136

大ヒゼ沢6

大ヒゼ沢10

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 1350m辺りか、谷が大きく右へ屈曲した所に深いプールに抱かれた4m程の滝がありました。
千浩を先頭に智尋、そして大祐が泳いで滝に取り付きます。
それを見て私は側壁のバンドからチョンボで滝の落ち口へ出た。
最後に和田氏が滝を登って来ます。

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 「和田さんが落ちた!」 という声を聞きました。
和田氏は泳ぎの名人である。彼は歩くより泳ぐほうが達者だ。
問題は無いだろうと思いながら滝壷を覗くと、和田氏は岸へ泳ぎ着くところでした。
泳ぎ着くと同時に顔を顰めながら 「脚が折れた!」 と叫んでいます。
立木にロープを掛けて懸垂下降して和田氏に駆け寄ると体を震わせて痛みを堪えています。
岸辺から体を休める所まで移動させました。
可也の痛みがある様なので骨折しているのは間違いないだろう。
幸い開放骨折ではない様子で、また他に怪我や痛みは無いようです。

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 大祐と智尋に下山して警察に救助要請 (出来るだけヘリコプターでの) と
緊急連絡先の栄治、それから副会長の浦本、家族への連絡を依頼する。
二人を見送ってから、寒いという彼にセーターや雨具上下を着せる。
折れていると思われる左足に添え木を当てることになり、折角着せたが雨具の下だけを脱がせることにした。
脚から雨具を脱がせるため痛めた左足を少し浮かせて雨具を引っ張るたびに 「痛い!」 と呻く。
「5分に1cmずつ脱がせて」 という言葉に笑ってしまうと同時に和田氏を襲う激痛の具合を察せられる。
そろりそろりと雨具を脱がせ、千浩とテーピングテープで倒木の添え木4本を固定する。
タープやエマージェンシーブランケットを掛けてやると私たち二人はすることが無くなった。

大秀16-IMG_4153

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 果たして大祐たちは無事に下りてくれたろうか。警察はヘリを飛ばしてくれるだろうか。
彼らが下って連絡を付けるまでにどれ位掛かるのか。ヘリが来るのにどれ程待てばよいか。
暇だ。千浩はウトウトとし始めた。竿でも出すか。和田氏が落ちた滝壺から魚の反応は無し。

大秀18-IMG_4159

県警ヘリからの現場写真
大秀23-IMG_4175




県警ヘリからの現場写真
大秀24-IMG_4176



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 大祐たちが下山してから約3時間後、バタバタとヘリコプターの音が近づいてきた。
銀色のエマージェンシーシート振った。
上空に現れた長野県警ヘリはホバリングして私たちを確認して一旦離れる。
また上空で停止し、一人の救助隊員がホイストに吊られて下りてきた。
着地した所はプールの中で膝まで水に漬かるのも構わず和田氏に駆け寄り搬出用ハーネスを装着。
二人の間に和田氏のザックを抱くようにしてピックアップしていった。
上空でホバリングするヘリに収容されヘリのドアが閉まるのが見えた。と同時にヘリコプターは去って行った。
5分余りの僅かな時間だった。
若い県警の救助隊員はカッコ良く、まさに救世主に見えた。手を合わせたくなるほど尊い方々に思えた。



 取り残された千浩と私は互いの顔を見合わせ
「やっぱり乗せて貰えなかったねぇ」 「下りますか」 。
滝場を二箇所ほど懸垂下降して朝来た渓を下る。途中まで大祐と智尋が迎えに来てくれた。

大秀21-IMG_4169

【救助要請のため、先に下った大祐たちの話】
滝越しへ下るより白巣峠まで車で登ったほうが携帯電話の電波状況が良いだろうと判断した。
白巣峠でも決して電波(ドコモ)は良くなかったが警察へ繋がり、ヘリコプターでの救出を依頼した。
長野県警は 「山岳の谷はヘリでは危険だから飛ばせない。地上からの搬出を試みる」 。との事であったそうだ。
大祐が何度も 「途中滝が幾つも有り,地上からでは困難,出来ればへりを飛ばして欲しい」 と依頼する。
二時間後、県警から 「これからヘリを飛ばす」 との回答があり、すぐさま白巣峠に県警ヘリが飛来し、
ホイストで降りて来た隊員と地図で事故現場を確認してヘリは現場へ向かった。
「無事搬出。木曽病院へ収容」 という連絡を受けて私たち二人を迎えに行った。
白巣峠から警察の他、緊急連絡先の栄治に連絡を取る。
浦本、栄治たちは和田氏の奥さんを乗せて木曽病院へ向かうとのこと。

【救助要請時の時系列】 大祐よりの報告
11:12 事故発生!
11:45 智尋君と2人で下山開始。
12:30 車に到着。 携帯圏外のため,勘で白州峠に移動。
12:40 白州峠に到着。
12:50 電波状況があまり良くないため,安定した所を探して110番通報。
     警察とやり取りの後,一旦警察から待機の指示。
13:10 この間に留守宅の栄治君に事故報告。
      (同時に浦本さんと和田さんの家族に連絡も依頼する)
13:15 所管の木曽警察や県警航空隊から入れ替わり電話があり説明する。
     その後待機。
14:15 浦本さんから電話があり,経緯など説明。
14:35 県警ヘリが白州峠に飛来,その後救助隊と落ち合い事故現場の場所を告げる。
     この後直ぐに救助に向かって行く。
14:55 警察からヘリに収容完了と収容病院の一報を貰い,今後の行動を聞く。
14:56 浦本さんに収容先の病院を伝える。
15:00 元の駐車地まで移動。
15:05 和田さんの荷物がまだあると思い,再び沢を登る。
15:45 下山中の渡辺さんと水野君に合流。

大ヒゼ沢13

大ヒゼ沢14

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  「和田氏は無事病院へ運ばれたし、温泉でも入っていくか」 混み混みの王滝温泉で汗を流し病院へ。
奥さんや浦本、栄治は先に到着しており手続きを済まし、浦本の車で和田氏を多治見まで先に送って貰う。
私たちは木曽警察署へ行って30分ほど事情聴取を受けた。県警ヘリから撮影した写真を見せて貰う。
途中21時頃、ラーメン屋へ立ち寄り遅い夕食をとり瑞浪へと帰着。
多治見市民病院で和田氏の入院手続きを済ませた浦本、栄治を待ってほぼ午前零時ごろ解散した。

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【事故時の状況】
この4m程の滝の下には大きな滝壺のプールがあり、落ち込み直下の水深は2m以上あると思われる。
千浩君が右側壁に沿って入水し落ち込みに至る。
続いた智尋君は逆の左側壁に沿って入水し落ち込みに至る。
二人は滝の水流右側を登って落ち口に至った。
大祐君に続き和田氏も滝の落ち込みから中間1,5m程の所まで登ったが足を滑らして滑落。
滝壺に落ちたが水深僅かな所に岩の裂け目が有り、そこに左足を挟みとられる。
勢いで脚を捻りながら落水。酷い痛みを我慢して岸まで泳ぎ着く。

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【安全確保の判断】
滝を登れずに落ちた場合でも滝壺の水深は深く、千浩君ならば問題無いと思われた。
続いた3人がもし滝の途中で登攀に行き詰ったとしても、
先に登り切った千浩君がお助け紐を出せば難無く突破出来る程度の滝であった。
しかし実際は水面下の隠れたところに岩が有り、
落ちた時にその岩に体の何処か一部をぶつければこの様な事故になってもおかしくはない。
ということが結果として判明した。

【事故による反省】
事故の主因は「此処なら行ける行ける」と判断して行ったが、行けなくて足を滑らして滑落。
落ちた所に運悪く岩の割れ目が有って、そこに足を挟んで捻って折れた。ということ。

「此処なら行ける」 と云って、行けてしまった事や、
行けなくて落ちても水没程度で済ませた事はこれまでも度々あり普通のこと。
一目で困難と分かれば高巻く。その高巻きですら危険を伴いルートの選定は難しい。
行けるか行けないか判断に迷うときは
その場の状況、時、メンバーの力量と装備に相談の上、解決を図ってきた。

今回は行けるとの判断が間違っていた・・と判断するかどうかは難しい。
しかし事故を起こすときはこんなものだろう。
但し、行かせたリーダーの私の判断が誤っていたという事は明白であり責任は重い。
幸いと言うべきかどうか分からないが、今回は骨折自体は直接的に命に関るものでは無かった。
だが天候や県警側の事情などにより
ヘリコプターが飛べなくてビバーグを余儀なくされた場合、生命の危険率は格段に高まりました。
地上からの搬出となれば、隊員や遭難対策協議会員への身体的危険率も高くなる。

来るか来ないか分からないヘリを待ちながら狭い空を見上げて色々と考えました。
和田さんには痛いおもいをさせてしまった。
近年、山の一通りの経験を持った方が新入会員として入ってこらるようになりました。
私はそうした彼らに上面で厳しいことを言う様で実は甘えていたのではないか。
ハッとしたことは多々あり。この10年、大きな事故が無かったことは幸ではなく偶然だと思う。
今回の事故を受けた事が、今後「行けるのか」「行けないのか」の判断に大きく影響するとしたら
和田さんの痛みは幸いであったと思いたい。

木曽警察署で 【航空隊から「現場は非常に狭い谷間で救助は難しかった」との報告を受けてます】 との話を伺った。
その航空隊がヘリコプターから撮影した写真を見せて貰って私は驚いた。
事故現場から見上げると狭いながらも空はV字に広がり問題無く感じていました。
上空からの写真は谷底に向かって鋭く一気に狭く落ち込み
「現場は非常に狭い谷間で救助は難しかった」ということが理解できた。

大秀23-IMG_4175

山域研究であれ渓流釣りであれTOKIアルパインクラブは厳しい谷間へ行く頻度が高い。
その渓谷で事故を起こすということは、
その救助も厳しいものになるということを今回の事故を貴重な教訓としなければいけない。

和田氏の お陰 楽しいはずの山行が台無しになりましたね。
浦本君、栄治君、貴重な盆休みに出動・送迎有り難う。
ご苦労様でした。

【教訓と対策】
 「ここなら行ける」「ここは行けない」や、「この難所をどう攻略するか」これらの判断は今までも時々で対応
してきています。しかし事故は起きました。いや事故を起こしてしまった。
これは即ち、明らかに安全対策を怠ったと言う証明であり、判断ミスであったということでしょう。

 「これは危険だな」という所では安全策を講じますが行ける所は先頭者、または追随する者の判断でホイホイと
先へ足を運びます。【行ける所】 と 【行けそうな所】 そして 【行けない所】 の境界をもう少し厳しくする必要
があります。多少とも危険な場所が現れたなら、先ず先頭者は立ち止まりメンバーで検討する事が大切です。

 また、行程上に現れる危険箇所のチェックは大切です。未知の山へ山行計画をし、それを実行した山中(特に谷
の中)で突然 “危険箇所” が現れる事こそが沢登りも含めたアルパインクライミングの醍醐味です。
この困難をメンバーの力を結集してどうのように乗り切るかを検討する・・。そういう楽しみが無くなってしまう
のであれば行く意味は有りません。
ただし、 【所々に危険箇所が現れるかもしれない】ではなく、【山へ、谷へ入る事こそが多くの危険を孕んでい
る】 という事をもう一度考え、そして今まで以上に慎重な心構えで望まなければならない。

 例えばこの事故の前の山行で私はロープを車に忘れました。ロープを持っていく担当の一人であったにもかかわ
らず、にです。数年前までは沢へ行く時は必ず全員が8mm30mのロープを携行していました。
今回、事故現場に残った怪我人を含め3人の中で鎮痛剤を持っていたのは私だけです。しかしその鎮痛剤は何時のか
判らないモノでした。装備の甘さは即ち、山へ登る意識の甘さとして表れています。装備だけでなく技術を・知識
を身につけ、体力をつけ、そして自分の命を守り、仲間の命を守る覚悟を持たなければならない。

 一般の社会生活やその他のスポーツでならば不可抗力による事故に合う事はあるでしょう。
しかし登山中の事故において多くは登山者にその原因はあるものです。

記録/報告:渡辺


和田氏:多治見市民病院にて110817_142540

事故怪我当事者:和田氏からの報告

その時私は小滝の手前に両足を何故かそろえザーザーと水が流れるところに立っていました。
岩の角度は、滝壺側へ少し傾いていた程度です。
突然、立ったまま平行移動したかのように滑り滝壺へ落ちました。
とっさの事で、右側に両手をつき、その勢いで岸まで泳いで戻りました。
左足に強い痛みを感じたのは、その時です。

原因らしきものを、あれこれ考えます。

1、まず立ち方でしょう。
 普通に足を広げ流れを避けて立っていればこんな事にはならなかったはずです。
2、日帰りのようにザックが軽ければ、
 体が水深の浅いところまでで留まり捻挫程度ですんでいたのかも、、、。
3、立っているとき 「さてと、どこから登ってやるかな。正面突破でもしてやるか。」
 てなことを考えていました。朝のうちゴーロ続きで期待はずれだったため、
 時間をとって楽しめるルートを考えてしまったという事でしょう。サッサと行ってればねえ。
4、岩の割れ目さえ滝の下に無ければ、、、。これが一番。
5、普段は大体トップで泳いで行って水深その他チェックするんですが、今日は5人中5番目でした。
 下の滝で一泳ぎしてたんで、、、。チェック怠りました。
6、沢シューズの磨耗状態は問題ないです。

 今思いつくのは、大体こんなもんです。また何か思いつけば例会ででも話しようと考えています。
 皆さんには、色々とご迷惑・ご心配をお掛けしました。
渡辺リーダーの指示の下、山岳会の一致団結した行動に助けられました。有難うございました。


名称未設定-3


2011年11月22日 フジテレビ・スーパーニュースより




































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