御嶽山 中の湯ルート   御嶽山噴火

2014年9月27日
御嶽山 中の湯ルート   御嶽山噴火  【御嶽山】
伊左治・他8名

※私以外の人物が特定されるような写真は掲載しません。

伊左治御岳噴火画像7 - コピー
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9/27 会社の山岳部の新入部員歓迎会ということで、
私が幹事を務めまして総勢9名で御嶽山へ紅葉を見に行きました。
今年入部したのは3名です。(男2名、女1名)
5時に会社に集合の予定だったが、ベテランメンバーの一人が来なくて20分程待ちぼうけをくらいました。
その人は結局来ませんでした。どうやら忘れていたようです。
連絡がつかないまま出発したのが5:20頃。

伊左治御岳噴火画像1

中の湯に到着したのが8:20頃。(出発が遅れた分予定よりおよそ20分遅れている)
予報通り天気は良さそうです。
支度と簡単な自己紹介をして8:30頃登山を開始しました。
私がトップを務め9:00頃飯森小屋で最初の休息。
その後、行者山荘を通過。
私だけ小屋の脇に流れる水のきれいな沢にて、
持参したペットボトルに水を汲み20Lを背負っての登山を開始。
水汲みの際、後から直ぐ追いつけると思い、
みんなには先に登っていってもらうことにした。
前の週に鳩吹山を26L背負って登っていたので、20Lくらいなら直ぐに追いつけるつもりでいたが、
標高が高いせいか体が温まってもなかなかペースがあがらないでいた。
途中、どこかのテレビ局が紅葉番組でも製作しようというのか
5,6名のカメラやマイクをもったスタッフとすれ違った。(後から分かったがNHKだったそうな)
「きれいな紅葉ですね」「そーですね。ナナカマドとダケカンバがきれいですね」
なんてセリフを何度も取り直していて、僕達がありがたく見ている山岳番組もこうやって
地味に撮影をして作られているんだなと思いながら歩を進めました。

伊左治御岳噴火画像2

一生懸命登っているつもりでも仲間にはなかなか追いつけない。
女人堂の手前にて休憩をしていた仲間にやっと追いついた。
女人堂を10:40頃通過し、ちょうどそこら辺から森林限界となり一気に視界が開け、
カメラを持っている人は眼前に広がる紅葉に夢中で写真を撮りました。

伊左治御岳噴火画像3

しかし、やはり私はペースがあがらず、先頭からもカメラ隊から徐々に遅れをとり始め、
これ以上遅れるわけにはいかなかったので石室山荘にて水を捨てようと密かに思っていました。
でも、石室山荘まではなんとか頑張ろうと重たい体に気合を入れ直した。
11:45頃なんとか石室山荘に辿り付いたところで、
仲間全員が待っていてくれ、そこで本日3回目の休憩をした。
「いさじ、トレーニングしとるね~」なんて言われながらも、
せっせとペットボトルの水を捨て始めました。

伊左治御岳噴火画像4

4L捨てたところで、けたたましい崩落音が山全体に鳴り響いた。
少し緊張感が高まり、辺りを見渡した。
自分たちがいる斜面で崩落している様子はないことを確認して少し安心した。

伊左治御岳噴火画像5

すると剣ヶ峰の向こう側からモクモクと雲のようなものが勢いよく湧き出してきた。
積乱雲じゃない。
ん?御嶽は噴煙を上げる山だけど、こんなところから噴煙って見えたっけ?
噴火?いやいや・・・・・・でも、それしかないよな。
だとするとこの距離はやばいのか?やばいとすればどのくらいやばい状況なんだ?
見当もつかない未曾有の状況下で、状況を把握しようと努めた。
周囲にいるみんなで「おお!噴火だ!」言いながら、
まだ直接的な影響はなかったので、その後少し様子見していた。
すると田ノ原と黒沢口ルートの間にある南俣川(初夏に沢登りしたところと思われる)
方面に向かって、噴煙を上げながら爆音とともに何かが下っていくのを目撃した。
火砕流か?
また少し緊張感が高まった。
火砕流であれば、木造の小屋にいてもあまり意味がない。
下りられるだけ下るか、小屋に逃げ込むか迷っていた。

伊左治御岳噴火画像6

いずれにしても身軽にしておこうとザックからペットボトルをもう2本取り出し、捨て始めた。
この状況下においても、私はペットボトルごと捨てることはせずキャップを外して水を捨てていた。
小屋が近くだから、やばくなったら小屋に逃げればいいや程度に思っていた。
正しい行動がわからず正解を導き出すために
水を捨てることで自分を落ち着かせ今後の行動を考えようとしていた。
しかし、水を捨てている間に次々と噴火が起こって噴煙が徐々に迫ってきていた。
年配者から「水なんて捨てている場合じゃない!下るぞ!!」
と言われ、何となく下る方が正しいと思い込んだ。
まだ距離があったので巻き込まれる前に逃げ切る作戦か?
と勝手に解釈してなんとなく下る流れになった。
(実際には噴火はこれ以上ひどくならず、収まったと考えたとのこと)
じゃ、この水を捨てきってから下ろう!(結局全部で8Lを捨てた)
空のペットボトルをザックにしまい僕の準備が整い次第、みんなで駆け下り始めた。
すると2,30Mほど下ったところで、噴煙に飲み込まれた。

伊左治御岳噴火画像7

伊左治御岳噴火画像8

伊左治御岳噴火画像9

伊左治御岳噴火画像10

僅かな間の出来事であった。一瞬にして視界が奪われた。
刹那、爆音にかき消されながらも暗闇の中で叫んだ。
動くな!口をふさげ!目を閉じろ!!
緊張感が最も高まった瞬間だった。


噴煙に飲まれた瞬間に頭によぎったのは。
マジ?予想よりだいぶ早いじゃん。
さっきまで300Mくらいは噴煙から距離あったのに。
火砕流がくるのか?
判断を間違えた!やっぱ小屋が正解じゃん。。。
もう終わりだ。

噴煙に飲まれて数秒後、意識があることが確認できた。
ん?僕はまだ生きているぞ?
単に噴煙に包まれただけか。

噴煙の中、色々な考えを巡らせた。
なるほど、火災の際に煙で視界が効かない状況と似ているな。
しかし、火災と違って噴火は何が起こるかわからないからな。
知識がない分、余計怖いな。
視界のない全くの暗闇の中、火砕流が忍び寄ってきているのか。
火砕流が来るなら一瞬で溶かされるのか。。。
それならそれで仕方ないな。

さてさて、どのくらいこの噴煙の中で待機していればいいんだろうか?
1時間?一晩?もしかして一週間ってことはないよな?
見当もつかないな。
噴火にも周期があるだろう。風の影響もあるだろう。
だけど、9合目でその影響の恩恵にあずかれるのか?
仮に弱まっても視界確保の期待はできないよな。
今まで読んだ本に、吹雪のことなどは載っていても
噴火のことまでは対処法が書かれた本なんて見たことないよな。
冬山でホワイトアウトに合う時はきっとこんな感じで、
視界が一切利かず恐怖になるんだろうな。
こんな状況はブラックアウトっていうのか?
そーいえば、僕はまだホワイトアウトの経験がないな。
この状況は寒くないだけマシか。
登山人生でもっと怖い出来事があるかもしれないと思うと、ゾッとするな。
とはいえこんな状況に陥ったら、怪我して生き延びるか、
死ぬかの二択だもんな。
覚悟を決めるか。
体の一部くらいは山にくれてやるか。
でも、ただ恐怖を感じながら最期を待つのも面白くないね。
残り幾ばくかも分からない人生、いっそこの状況をも楽しんでやろう!
さっきから溢れ出てくるアドレナリンを解放することにした。

噴煙に包まれた直後から爆音と共に何かが全身に激しく降り注いでいる。
強まったり弱まったりしながら。
目に見えない何かを想像してみた。
感触からして3,4センチの噴石が無数に自由落下で降ってきているのか?
これは結構効くな。
まぁでも、この程度なら怪我はしないな。
なるほど俺はずっと火砕流の恐怖だけを感じていたけど、
噴石という恐怖もあるのか。
大きな噴石が頭に直撃したらイチコロだな。
俺が無事なら他のメンバーも無事だろうけど、
既に犠牲になってたりしないよな?
この轟音だと悲鳴も聞き取りにくいから状況が全く分からない。
(降り注いでいる何かというのは実際にはただの灰だった)

一瞬、視界が2,3Mくらいになったから前の人がいるのを肉眼で確かめられた。
ほんの目の前にいた。
あいかわらず轟音が鳴り響いている。
大声をあげた。
横に張ってあるロープを伝って小屋まで引き返すか?
多分小屋までは30Mほどだから手探りで進んでも行けるはず。
記憶ではロープは小屋まで繫がってたはず。

動こうとした瞬間、また暗闇に閉じ込められた。
動く準備ができてなかった。

一旦視界が開けたということは、またチャンスは訪れるかもしれないな。
取りあえずしゃがみ込むのはやめて、階段状になっている石に座り込んだ。

ん?なにやらふわふわした触感のものが・・・。
灰が結構積もってるな。10センチくらいか?
わずかな時間でこんなにも積もるものなのか。
まさか雪より前に灰が積もるとはな。笑える。
軍手ごしでもなんとなく温かい。
石焼き芋ができるか?
サツマイモ持ってくれば良かったかな。

軍手を通して呼吸しているのに灰が肺に入ってくるな。
軍手も灰まみれかな。
上手に吸わないと苦しいな。
なるほど、こーやって肺に灰が入って、窒息死するわけね。
あ、こんな時に親父ギャグか。
それにしても、まさかこのタイミングで噴火って!
非現実的だな。現実に起きているわけだけど。
これだけの規模だと、自衛隊動くよな?
こっちから救助してくれ!なんて言わなくても、
観測情報を基に国も動いてくれてるよな?
自衛隊ってことは国家レベルの災害か。
そんなものに出くわすとは運がいいのか悪いのか。
この状況で自衛隊はどのような救助手段を持っているのかな。
自力下山するにしても救助されるにしてもまずは生き延びておく必要があるな。
とりあえず、さっきから降り注いでいる弾丸との長期戦に備えるために
レインウェアを取り出しますか。
ザックを下ろして、となりに置いてみた。
ザックの開け口はどーこーかなー?
お!あった、あった。
あとは口を開いて、手探りで取り出しますか。
んー、ペットボトルばっかじゃん!
なんでこんな日に限ってこんなにペットボトルを持ってんの?
もういい。手当たり次第に出すか。
お!どこでもビバーグの3人用のツエルトじゃん?
でも、ツエルト被ると動けなくなるし、
しかもこのツエルトは相当年季の入ったもらいものだから臭いんだよね。
まだ硫黄臭い方がマシだな。
とりあえず、ツエルトはあとにするか。
(この時、前にいる人にツエルトを被せてあげるだけの機転は僕にはなかった)
まずはレインウェアだ。
お?これだ、これだ。出てきた出てきた^^
袋から出して、まずはチャックを開かなきゃね。
ん~、あれ?噛んだ?
やべーじゃん、どっちにも動かんじゃん!
視界がない時に噛むなんて。。。>_<

この時何かが一段と激しく降り注いできた。
血が出るような怪我をする程度には思えなかったけど、
帽子やズボン、服の上からでも痛くて、とても我慢できるふうではなかった。

痛い!痛い!
もしかしてだけど、これからが本番か?
でかい噴石が飛んでくるのか?

これ以上、激しくて熱いのがきたら無傷では済まないな。
火傷するから、早急に緩衝材がいるな。
チャックは諦めよう。
もういい、いっそ逆さまでもいいから被ってしまえ。
傍から見たらきっとこの格好は面白いんだろうな。
いかに僕が慌てふためいているのかがわかるだろうな。

激しく降り注いでいたのは5分ほどだったろうか、
降りやんだら次第に視界が開けてきた。
3M、5Mと段々と薄っすらながらも視界が確保できてきた。
お!火砕流は来ていないんだ?
これなら小屋に辿り付けるかも。
みんなで小屋に向かってゆっくり歩き出した。
ぼんやりと小屋が見えてきた。
小屋を視界に捕えたことで、少し余裕が出てきたのか頂上方面を見上げた。
が、噴煙で頂上方面は全く様子を覗えなかった。
噴煙の中からゴロゴロと恐ろしい音がなっていた。
噴火ってこんな音するんだ?これは貴重な体験だな。
しかしこの有様だと頂上付近にいる人は全滅だな。
視界がなきゃ逃げることもできないしね。

小屋に入るやいなや、メンバーの点呼をとった。
どうやら全員いるようだ。
パッと見、怪我をしている感じはないな。
ふぅ、不幸中の幸いだ。
歓迎会でいきなり、山岳遭難なんて。しかも、火山に巻き込まれたって。
誰も怪我していなくてよかったぁ。
誰か一人くらいは犠牲になるかもって思っていたけど、
全員無事でよかった。
小屋に入って割とすぐに小屋の人からウエットティッシュと
タオルとヘルメットが支給された。
これには流石に驚いた。こんなものが備蓄されていたのか。。。
火山灰が口に入ってモゴモゴする人には水を渡した。
トレーニングの水がこんなところで役にたった。全部捨てなくてよかった。

小屋に入っても、僕の興奮は収まらない。
今年から登山を始めた仲間は不安がっていた。
僕まで不安がったら新入部員はもっと不安に思うだろうと考え、
余裕をかまして楽しんでみせた。
人数分のツエルトもあり、水も食料もあったので、
小屋に入れた時点で僕はほぼ助かった気でいた。
翌週には五竜岳を企画していたので、
仲間に五竜のことを話題に持ち出してみたけど考える余裕はないとのこと。

伊左治御岳噴火画像11

時々現実に戻った話もした。
きっと車は酷いことになっているだろうね。
噴石でボコボコになっていたら買い替えかな?また新車になるのか。
悪くないね。なんて話をしたけど、
ブラックジョークを皆真面目に捉えてしまっているようだ。
小屋には1時間以上いただろうか。
小屋の人が下界と携帯で連絡をとり合って、
噴火が収まるのを待ってGOサインをもらって皆で下山をし始めた。

伊左治御岳噴火画像12

さっきまで紅葉で色とりどりであったが、
灰で覆われてしまって全くモノトーンな殺風景に変わってしまった。
しかし、降り積もった灰も段差を埋めてくれたことにより、
幾分歩きやすくなった。
噴火も悪いことばかりではないと前向きに捉え、下界に向かって歩き出した。
記録:伊左治

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伊左治御岳噴火画像15




















































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